りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

鋼の夏(シルヴィア・アヴァッローネ)

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イタリア中部、エルバ島に向かい合う製鋼所の町ピオンビーノで生まれ育った14歳の2人の少女、アンナとフランチェスカは親友同士でしたが、アンナが兄の友人に恋をしたことから、2人の友情はすれ違っていきます。

もともと2人の家庭は問題を抱えていました。アンナの母サンドラはしっかりした共産党員ですが、父アルトゥーロは失業して犯罪に片足を突っ込んでいるようですし、フランチェスカの父エンリコは家庭で暴力を振るい、母ローザは無気力になっていくのですから。

何より、この町が閉鎖的なのです。かつてイルヴァ島と呼ばれたエルバ島から採れた鉄鉱石を原料として起こった、唯一の産業である製鋼所は次々と閉鎖されつつあり、大人たちも失業に怯える中、思春期を迎えた少女たちの焦燥感には出口がないのです。

アンナは兄の友人マッテイアの恋人となって性的関係を結び、アンナとの関係が壊れたと思い込んだフランチェスカが自棄になってストリップ場でアルバイトを始めるという「出口」を求めたというのも、他に選択肢がなかったからのように思えてきます。なんて苦しい思春期!

ピオンビーノという町は実在します。市から苦情がきたというのも理解できるほど、リアルに描かれた物語です。

2011/12