世界のはじまりは音楽で(このあたりがトールキンですね^^)、妙なる調べの中にこそ世界の秘密は潜んでいるという前提の下、声を失った「祓いの楽人」オシアンが、相棒ブランと共に放浪し、悲しい愛に迷って、この世に想いを残したままの者たちの魂を解放していきます。愛する者を突然奪われる、理不尽な悲しみや、自責の念。それはケルトの伝説時代でも、今の世界でも一緒の気持ち。最初の2編では、眼がしらも熱くなりました。
この本はシリーズになるのでしょうか。本書の5つの短編ではオシアンとブランは狂言回しですね。「物語」は、彼らに魂を解放される人や妖のほうにあるのです。いずれ2人を主人公にした別の「物語」が書かれるのでしょう。作品の評価は、それを待って定まることになるのかもしれません。
ともあれ、今まで知らなかった作家の良質な作品に触れることができたのは、嬉しいことです。ブログの効果ですね。トールキンのファンである作者は、「指輪にちなんだ名前」をいくつか忍ばせたそうです。ロージィとトゥリンはわかったけど、他にもあったのでしょうか?
2007/1