りぼんの読書ノート

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美術愛好家の陳列室(ジョルジュ・ペレック)

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読み終えましたが「読了」と言えるのかどうか? なぜなら、本書の大半を占めている絵画と来歴の部分について、何が真実で何がでっちあげなのか、さっぱりわからなかったのです。

ラフケという美術愛好家が、画家・キュルツに描かせた一枚の絵画。それは彼のコレクションに陳列された多くの絵画を描いたもので、その集合絵画に描かれた絵画の素晴らしさが、話題になります。

ラフケの死後、コレクションの一枚一枚に専門家の解説が加えられて売却に出され、それぞれ然るべき価格で落札されていくのですが、数年後それらの絵画の大半が贋作であることが明らかにされます。もちろん、専門家によるデティル説明もでっちあげであると・・。作者は言います。同じように、このフィクションにおける絵画の説明も、すべてそれらしくみせかけるという、身震いするような喜びのためだけに考えられたものであると・・。

絵画を描いた絵画。その絵画を描いた絵画。そのまた絵画を描いた絵画。絵画の来歴など、全て自己参照にすぎないのでしょうか。真作と贋作の違いは鑑定や来歴には存在しないのだろうけど、それは絵画のみならず、フィクションの世界でも同じこと?

やはり本書を本当に楽しめるのは、作品に登場する、時代に埋もれた画家たちや鑑定家の真贋を判別できるような一部のマニアだけなのかもしれません。

2007/1