りぼんの読書ノート

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岩崎弥太郎と三菱四代(河合敦)

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大河ドラマ龍馬伝」で脚光を浴びている岩崎弥太郎の「成り上がり物語」がメインですが、二代目の弟・弥之助、三代目の息子・久弥、四代目の甥(弥之助の息子)・小弥太へと至る歴代三菱当主の業績を中心に、敗戦による財閥解体までの岩崎家の歴史を紹介した新書です。

やはり、初代の弥太郎のキャラが圧倒的に魅力的ですね。土佐の地下浪人の身分から何度も這い上がろうとしては、その都度、奉行所を誹謗して入牢、公金を使い込んで解任と(かなり自業自得の感もありますが)、撥ね返され続けながらも、維新後に土佐藩の外郭団体であった旧海援隊の持ち船を引き継いで海運業を起こし、やがて日本屈指の政商となるに至るのですから。ただ、龍馬との仲については謎とのこと。

台湾出兵西南の役で政府の輸送業務を独占して巨利をあげ、政商として発展しますが、大久保利通の暗殺と大隈重信の失脚によって政府内の後援者を失い、やがては反三菱勢力が結集して投資した共同運輸会社とのダンピング合戦に巻き込まれてしまいます。

その最中に弥太郎は病死。弥太郎の時代には、三菱はほとんど海運事業の会社だったのですね。その後、三菱商会は共同運輸と5:6の比率で合併してマイノリティに甘んじるのですが、単独で45%を握る三菱に対し、相手の55%は烏合の衆であったために、日本郵船会社は単独で最大の株主である三菱の手中に落ちていったとのこと。でもこれは後のお話。

海運事業を手放したばかりの三菱の2代目総帥となった弥之助は、多角化というよりも、事業的にはほとんどゼロからの出発。しかしここで、鉱山・銀行・倉庫・地所・造船などの新たな事業を興し、今に続く三菱グループの礎を築きあげました。

3代目の久弥は幼稚舎からの慶応育ちといいますから、生まれながらのお坊ちゃまですね。それは4代目の小弥太も一緒ですが、ともに時流に合った経営で、戦争景気の時にはもちろん、昭和の大不況の際にも事業を拡大していった、それぞれ個性ある名経営者です。

戦後の財閥解体で、岩崎家の三菱支配も終わるのですが、三菱各社がそれぞれ日本を代表する企業となって今に至っているのは、誰もがご存知の通り。私なんか、世が世なら丁稚だな。著者の人生訓が何度も出てきて煩わしいのですが、そこを無視すれば、岩崎家4代の小史としてコンパクトに纏まった読みやすい本です。

2010/6