りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

海の底(有川浩)

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図書館というもっとも平和的な機関が武装しなくてはならない状況を描いて、読者の意表を衝いてくれた『図書館戦争シリーズ』は楽しかったのですが、ラブコメ的な雰囲気が苦手でそれ以外の本は読んでいませんでした。

本書はその前に書かれた作品で、もちろん「ベタな青春と恋愛」が満載なのですが、主題は怪獣の登場を切り口にして、この国の自衛隊のあり方に問題を提起するもの。そういえば、『図書館戦争シリーズ』も最初のころは問題提起のほうがメインだったのですが、4作まで続く中でラブコメのウェイトが高くなっていっちゃったのでした。

横須賀に巨大甲殻類「レガリス」の大群が来襲。市民を救助するために機動隊が命がけで奮戦するのですが、しょせんは治安部隊。盾と小銃程度の装備では、劣勢に追い込まれていかざるをえません。完全武装自衛隊が出動すれば話は早いのですが、国が決断を下せないでいるうちに、米軍が、基地を守るために横須賀を爆撃するとの動きを見せるのです。果たして・・。

こんな状況の中、埠頭に横付けされたままの潜水艦「きりしお」に、逃げ遅れた少年少女らを連れて退避した、新任の海上自衛官、夏木三尉と冬原三尉の物語が進行していきます。こんな非常事態の中、地域や学校での力関係やイジメを持ち込んでくる子どもたちに手を焼く2人でしたが、引率役の女子高校生・望と夏木との間にほのかな恋愛感情も・・。

著者は「潜水艦で15少年漂流記」とのコンセプトで本書を書き始めたそうです。ところが、肝心の潜水艦は最後に至るまでピクリとも動かないし、活躍するのは自衛隊より機動隊だったりと、予定がどんどん変わってしまったそうですが、楽しく読めました。たまには「ラブコメ」もいいかもしれません。

2010/4