りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ハブテトル ハブテトラン(中島京子)

イメージ 1

「ハブテトル」とは備後弁で「すねている、むくれている」という意味で、「ハブテトラン」とはその否定形だそうです。東京の小学校に通う5年生のダイスケは、荒れるクラスと無責任な教師の間に立って登校拒否になり、両親の薦めで祖父母が暮らす広島県の松永で2学期を迎えることになりました。

ダイスケがそこで出会ったのは、お婆ちゃんの幼馴染という不良爺さんに、お母さんの同級生だった魔女先生に、素朴なクラスメイトたち。そして豊かな自然です。特産品のゲタを使った競技大会「ゲタリンピック」に参加したり、昔ながらの秋祭りで山車を牽いたりしていく中で、彼の心はほぐれていきます。

ところで、ダイスケにはひとつの気がかりがありました。それは東京で一緒に学級委員をしながら、ダイスケよりも一足先にキレて転校までしてしまった少女のこと。最後の瞬間に彼女の力になれなかったことが心残りだったのです。少女の転校先の今治が瀬戸内海を渡った対岸であることを知ったダイスケは、自転車でしまなみ海道を渡ろうとするのですが・・。

中島さんは、「のんびりと抑揚が大きい備後弁で会話部分を書いた。環境が変われば、これまでと違う価値観があることを子どもたちに知ってほしい」と話しています。

ダイスケの「転校」は一時的なもので、3学期になったら両親の住む東京に戻るのか、そのまま松永の学校に通い続けるのかを決めなくてはなりません。「違う価値観」を知ったダイスケの決断までをも、スラッと読ませてくれるこの本は、とっても読みやすくて、「優れた児童書」と分類してもいいくらいですね。ただ、梨木香歩さんの西の魔女が死んだとプロットが似ているのが気になります。

2009/3