りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

道連れ彦輔(逢坂剛)

シリーズ第3巻『道連れ彦輔居直り道中』から読んでしまったのですが、なかなか痛快な物語だったので初めから読んでみることにしました。主人公の鹿角彦輔は歴とした御家人の三男坊であるものの、見た目はただの素浪人。権威や忠義が大嫌いで、自分より弱い者には滅法強く、強い者には近づかない主義。家を出て長屋暮らしをしながら、小遣い稼ぎに用心棒のような「旅の道連れ」の仕事を請け負っています。はじめは連作短編集だったのですね。

 

「仇討ち千駄ヶ谷富士」

道場で兄弟弟子だった小人目付の神宮迅一朗が寄越した仕事は、美女の後家おむらが果たす夫の仇討ちの立会人になること。助太刀ではないところが奇妙だったのですが、果たして彦輔は「夫の仇」として狙われていたのです。全く身に覚えはなかったのですが・・。

 

「鞠婆」

かつて蹴鞠の上手だったという金貸しの鞠婆について借金の取り立てに出向いた彦輔でしたが、相手も用心棒を雇っていました。しかもその相手は先日の仇討騒動で助太刀だった剣豪の富永隼人。しかしどうやら彼には思惑がありそうです。鞠婆の金の隠し場所が意外でした。この巻から、彦輔と同じ長屋に住むいい女、狂歌師の勧進かなめも登場しています。

 

「地獄街道」

地方藩の江戸勤番を斬って出奔した御家人を高井戸で捕縛した迅一郎でしたが、どうやら殺された侍の同僚たりからも狙われている様子。江戸に護送する際の身代わり籠を護送する依頼を受けた彦輔でしたが、騙されたのは刺客たちばかりではありませんでした。

 

「大目小目」

博打にのめりこんだ幼馴染を助けるために迅一郎は、彦輔を賭場に乗り込ませます。しかし賭場の用心棒として現れたのは、またしても富永隼人でした。今度こそ2人の間で決着がつくことになるのでしょうか。しかし彼にも事情がありそうです。

 

「本懐を遂ぐや」

彦輔を夫の仇と狙ったおむらでしたが、今度は息子の仇として彦輔を狙った義母に対して、彼女は意外な行動に出るのです。しかもおむらが再度雇った富永隼人は、窮地に陥った彦輔を助けるのです。いったいおむらに何が起こっていたのでしょう。

 

「無残やな隼人」

何度も彦輔と剣を交えた隼人が落ち込んでいます。彼を慰めにかかった彦輔とかなめに隼人は、2度も惚れた女を自害させてしまった悲惨な過去を話すのでした。そして最初の事件にはまだ決着がついていなかったのです。折しも仇討ちに来た意外な相手に、隼人は斬られるつもりで立ち会うのですが・・。

 

2024/6