りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

伴天連の呪い 道連れ彦輔2(逢坂剛)

長屋でひとり暮らしをしている御家人の三男坊・鹿角彦輔の主な稼ぎは、小人目付をしている幼馴染の神宮迅一朗が回してくれる「旅の道連れ」。要するに用心棒のようなものですが、剣の腕前はそこそこながら窮地を避ける嗅覚に優れている彦輔にはもってこいの仕事。しかし迅一朗が回してくるのは、どこか危ない案件ばかりなのです。

 

「あやかし仁海」

荒れ寺に住み着いて娘たちを虜にしている妖しい坊主の仁海は、催眠術でも使っているのでしょうか。商家の若い娘たちを連れ戻す仕事を請け負った彦輔は、術にかけられてしまわないのでしょうか。仏罰vs神罰の勝負に出た彦輔が用意していたのは、神社名を隠した怪し気なお札だったのですが・・。

 

「面割り」

長屋で彦輔を世話してくれる年増美女の狂言師勧進かなめが、13年前の押し込み強盗事件の犯人の面割りに協力するよう、火盗改めから強制されてしまいます。それは彼女が隠していた黒歴史に関係していたのですが、かなめの恩人とも言える人物を犯人と名指しできるのでしょうか。もちろん彦輔は彼女の過去にこだわることなどありません。

 

新富士模様」

目黒富士に詣でる御家人の妻女が道連れを頼むなど、どのような理由があるのでしょう。その女性の夫と名乗る武士は、妻の浮気を疑っているようなのです。人気役者と逢引きをしていたのは小間使いの娘だったのですが、この話にはまだ裏がありそうです。

 

「秘名春菊斎」

最近話題の謎の絵師・春菊斎が出した美人画には勧進かなめが描かれていました。しかもその絵師はご禁制の春画も描いているようなのです。絵師の正体は版元に出入りしている若い侍なのでしょうか。苦し紛れながら迅一朗の「大岡裁き」もお見事でした。

 

「使いの女」

尾張藩の奥女中の使いで寺参りをするという女性は、どんな役割を担っているのでしょう。単なる艶書のたぐいではなさそうですが、その背景には尾張藩大奥の権勢争いもあるようです。前巻の「地獄街道」に続いて、甲州街道は彦輔の鬼門のようです。

 

「伴天連の呪い」

芝の寺に遊山に出かけた彦輔とかなめは、額に十字の焼き印を押された武士の死体が発見された現場に出くわしてしまいます。そこはかつて切支丹の伴天連が火あぶりにされた寺だというのですが、今どき江戸市中に隠れ切支丹など潜んでいることなどあるのでしょうか。果たして事件には裏がありました。前巻ラストから姿を見せていなかった富永隼人が再登場します。昔は芝の高台から品川の海が綺麗に見えたのですね。

 

2024/6