りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

メアリ・ジキルと囚われのシャーロック・ホームズ(シオドラ・ゴス)

19世紀に流行したゴシックホラーでは、怪物にされた女性たちは軽く扱われている存在でした。彼女たちに光を当てた著者が生み出した「アテナクラブ」のメンバーは、ジキル博士の娘メアリ、ハイド氏の娘ダイアナ、ドクター・モローが創り出したピューマ娘キャサリンフランケンシュタインの花嫁にされたジュスティーヌ、植物学者ラパティーニの毒娘ベアトリーチェ。そして前巻で救出されて新メンバーに加わったのは、父親によって吸血鬼にされてしまったルシンダ・ヘルシング

 

本書は3部作シリーズの最終巻に当たります。欧州大陸での大冒険を終えてロンドンに戻ってきたメアリたちを待ち構えていたのは、アテナクラブの盟友であったシャーロック・ホームズの行方不明事件でした。どうやらジキル家の小間使いの少女アリスが、超絶的な催眠能力を発揮したことと関係しているようです。実はアリスの母ヘレンとエジプト学者の娘マーガレットが、モリアーティ教授と組んで不穏なことを企んでいたのですが、アリスは母親側についてしまうのでしょうか。

 

本書で巨悪として登場するのは、2千年の時を経て復活を果たそうとしているエジプトの女王テラ。モリアーティの計画は、老齢のヴィクトリア女王に代えてテラを新女王との座に据えて操ること。復活したテラは男たちの悪だくみなど一撃で粉砕してしまうのですが、彼女の野望は遥かに邪悪でスケールの大きなものでした。メアリたちは、かつてイシスの女祭司であり現在は錬金術師協会の会長となっているアッシャの協力を得て、テラに立ち向かうのですが・・。

 

アリスの母ヘレンもマーガレットも、テラもアッシャもまた、19世紀ゴシックホラーの産物です。時と場合によっては彼女たちもアテナクラブのメンバーになれたのかもしれません。このシリーズは、クラブメンバーのひとりであるキャサリンが書いたという体裁になっていますが、途中で皆が口を突っ込んでくるのも楽しい点です。著者は「彼女たちに、彼女たち自身の物語を語って欲しかった」と語っています。続編を期待したいシリーズです。

 

2024/6