りぼんの読書ノート

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真珠とダイヤモンド 下(桐野夏生)

時代はバブル全盛期に向かっていきます。東京本社に栄転が決まった望月と結婚した佳那は贅沢な暮らしに染まっていくのですが、その影にはヤクザの影が見え隠れしています。2人の東京生活が浦安で始まったことは、著者のデビュー作である『冒険の国』を連想させますね。間近に見えるテーマパークとの対比によって時代に取り残される焦燥を描いた作品ですが、バブルの波に乗ったカップルにとっては、そんなものは庶民の夢でしかなく、やがて都心へと引っ越していきます。

 

一方の水矢子は受験に失敗したことを契機に流転の生活へと向かいます。やがてバブルに陰りが見え始めた時に、彼女たちの運命はどこへと向かうのでしょう。結局のところ、男の殻に護られる道を選んだ真珠は腐り、男を拒んで身を削ることのないダイヤは輝かずに終わってしまうのでしょうか。そして30年近くの時が過ぎ、50代になった2人は再開することになるのですが・・。

 

新NISAが始まって年初以来株高が続いています。しかしバブルの崩壊を知っている世代は、株価や地価が右肩上がりを続けることなどありえないことを知っています。どこで身を引くかのチキンレースを続けるのがせいぜいの所でしょう。いずれそんな体験など忘れ去られる時も来るのでしょうが、女性の社会的地位が元に戻ることはないはずです。本書における女性の生き方は、一回限りの特殊な時代のことだと信じたいのですが・・。

 

2024/6