りぼんの読書ノート

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小説イタリア・ルネサンス2.銀色のフィレンツェ(塩野七生)

16世紀ヴェネティアの青年外交官マルコ・ダンドロを主人公とするシリーズ第2作の舞台は、フィレンツェへと移ります。ローマの女スパイであったオリンピアとの関係を問題にされて、3年間の公職追放処分となったマルコは、そこでメディチ家内部の暗闘に巻き込まれていくのでした。

 

かつてルネサンス謳歌した花の都は、いまやスペイン皇帝カルロスを後ろ盾にした傀儡国家になり果てていました。メディチ家庶流の出身ながらカルロスの娘を妻としてフィレンツェ侯爵となったアレッサンドロは、親族や有力者を追放して共和制の伝統を踏みにじっていきます。やがて彼は又従兄にあたる族ロレンツィーノ・デ・メディチ(ロレンザッチョ)によって暗殺されるのですが、その動機は謎とされています。

 

本書は暗殺事件の背景を大胆に推理した作品なのですが、マルコの出番はあまり多くありません。フィレンツェ到着直後に起こったアレッサンドロ側近の殺害事件に巻き込まれ、犯人扱いされた宿屋の主人を救ったことや、既に亡きマキャベリの親友であったヴェットーリを交えてロレンツィーノと政治・哲学談義を交わしたことぐらいでしょうか。しかしマルコにとって、領土型帝国の支配下にある共和制都市国家がたどった運命は他人事ではありません。外交官として成熟していくためのステップとはなったのでしょう。

 

フィレンツェで再会したオリンピアは、この事件の報告を最後にスパイ業から足を洗うのでしょうか。マルコの物語の次の舞台は、彼女とともに向かうローマになります。

 

2022/11再読