りぼんの読書ノート

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マルドゥック・アノニマス 7(冲方丁)

シリーズの舞台となっている「マルドゥック・シティ」の地図がついています。さまざまな勢力の抗争が複雑になってきたことが理由でしょう。地区の配置はかなり異なっているのですが、イメージはニューヨークですね。

 

冒頭いきなり葬儀の場面です。バロットとアビーは、殺害容疑がなすりつけられて怒っているのですが、これはいったい誰を悼むものなのでしょう。その場に颯爽と登場して弔辞を読み上げるのは、市会議員に成りあがったハンターでした。そして物語は、ウフコックの救出劇からこの場面に至るまでの経緯に戻っていきます。

 

殺害されたはずのブルーがトロフィーにされて生きているとの情報を得たウフコックは、ハンター配下から抜け出して独立行動を取る「ガンズ」に潜入。救出に向かったバロットが再び対峙することになったのは、彼女と同等の空間認識能力を備え、彼女を上回る射撃の腕前を有するマックスウェル。2人の対決シーンは本巻のハイライトですね。

 

昏睡状態に陥ったままのハンターは、「シザーズ」の揺らぎを司る少女ナタリアの精神世界に入り込んでいました。シザーズから独立して「円卓」を司るノーマ・オクトーバーが送り込んだ刺客が、かつての敵「カトル・カール」のリーダーであるフリントのバーチャル人格ならば、ナタリアを守るのは父親ディムズデイル・ボイルドのバーチャル人格。ハンターはそこで「シザーズ」にも「円卓」にも属さない第三の道を選び取ることができるのでしょうか。

 

法学生であるバロットは師のクローバー教授に指名されて、オクトーバー社が都市中に蔓延させた薬害に対する集団訴訟の原告側弁護士に選ばれます。法廷で行われる死闘が彼女を一段と成長させることに疑いの余地はありませんが、このシリーズで最も魅力的なのは、「共感能力」で全都市のイコライズを目論むハンターですね。独立勢力としてノーマと手を組んだハンターは、市の頂点に立つ「シザーズ」との全面闘争に入っていきます。戦いの構図は複雑さを増し、新たなギフトの使い手も次々と登場してくる中で、次巻が待たれます。冒頭の葬儀が誰のものなのか、それは勢力図にどのような変化をもたらしたのかが気になります。

 

2022/11