りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2022/9 Best 3

1.愛の裏側は闇(ラフィク・シャミ)

ダマスカス近郊の田舎村にルーツを持つ男女の悲恋物語。何十年もの間、村の支配権を巡って抗争を続けてきたカトリック教家の息子ファリードと、正教会教家の娘ラナーの純愛は、第二次大戦後のシリアがたどった歴史の中で翻弄されていきます。1975年に25歳の若さでドイツに亡命した著者の自伝的要素を含む本書は、「20世紀イランのロミジュリ物語」などと要約してしまうには、あまりにも重い内容が込められた作品です。

 

2.塞王の楯(今村翔吾)

ともに近江に生まれたスペシャリスト集団が、それぞれの理想を掲げて戦乱の世を終わらせるために対峙する物語。かたや「最強の楯」である石垣が戦を防ぐと信じる穴太衆。かたや「最強の矛」である鉄砲が戦の抑止力となると信じる国友衆。2つの集団は、関ケ原の前哨戦にあたる大津城攻防戦で対峙することになるのですが・・。2022年上期の直木賞受賞作です。

 

3.大聖堂 上中下(ケン・フォレット

スパイ小説作家として有名な著者は、大聖堂の建築過程を小説化したいとの初志を抱いていたそうです。デビュー20年後に書き上げられた本書には、人命が軽い反面で科学の進歩と技術革新の時代でもあった中世が見事に描写されています。12世紀のイングランドで大聖堂建築の夢を抱く建築職人のトムと、義理の息子のジャックの物語が、スティーブン王と女帝モードの王位を巡る対立の中で繰り広げられていきます。

 

【その他今月読んだ本】

・女のいない男たち(再読)(村上春樹

・最後の秘境東京藝大(二宮敦人)

・大絵画展(望月諒子)

・ウィーンの冬(春江一也)

アメリカン・スナイパー(クリス・カイル)

・絞め殺しの樹(河崎秋子)

神の子どもたちはみな踊る村上春樹

・とうもろこし倉の幽霊(R・A・ラファティ

・京都はんなり暮し(澤田瞳子

・伯爵と成金(堀川アサコ

・興亡の世界史8.イタリア海洋都市の精神(青柳正規編/陣内秀信著)

・紅霞後宮物語 第13幕(雪村花菜)

・いのちがけ(砂原浩太朗)

 

2022/9/29