りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

犯罪小説集(吉田修一)

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これは現代の「説話集」なのでしょうか。不幸な運命が引き起こす犯罪は、多様な姿で現れるようです。

 

「青田Y字路」

少女失踪事件の犯人と疑われた青年は、10年後に起きた同様の事件で再度疑われて焼身自殺。2件めの事件では無罪であったことが判明するのですが・・。

 

「萬珠寿姫午睡」

色欲の限りを尽くした末に殺人容疑で逮捕されて週刊誌をにぎわした女は、幼いころの同級生でした。なぜか自分の名前をその女の源氏名に使われていた主婦は、女の半生をたどった末に危うい世界に入り込みそうになるのですが・・。

 

「百家楽餓鬼(バカラガキ)」

運送会社の御曹司として生まれた男が、マカオのカジノに嵌まり込んで巨額の使い込み・・というと、似たような事件を思い出します。

 

万屋善次郎」

村八分にされた男が村民を大量殺人という事件も実際にありましたね。故郷の村に戻って養蜂で村起こしを図った男が、ちょっとした行き違いで除け者にされていく過程が怖すぎます。

 

「白球白蛇伝

1年だけ活躍して怪我で引退した元プロ野球選手が、なぜわずかな金のために殺人事件を犯したのでしょう。幼少時から才能を発揮して、家族や周囲から尽くされることに慣れていた男は、引退後もヒーローであり続けたかったようなのですが・・。

 

2020/11