りぼんの読書ノート

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オデッサ・ファイル(フレデリック・フォーサイス)

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昨年秋に著者の自伝的小説である『アウトサイダー』を読み、初期3部作を読み返してみたくなりました。20代で通信社の海外特派員となって、パリ・東ベルリン・ナイジェリアに駐在した経験が、それぞれ『ジャッカルの日』、『オデッサ・ファイル』、『戦争の犬たち』となって結実したというのです。事実とフィクションが混然一体となって歴史の暗部を暴いていくという独特のスタイルの誕生です。 

 

物語はフリージャーナリストのミラーが、ケネディが暗殺された晩に自殺した老ユダヤ人の日記を入手することから始まります。リガの強制収容所から解放された過去を持つ老人は、「リガの屠殺人」と呼ばれたロシュマン所長が堂々と生きていることを知り、絶望のあまりに自殺したというのです。しかも老人の日記に記されていた事件は、ミラーと個人的にも関わっていることのようなのです。 

 

ナチス政権下でユダヤ人の絶滅政策を遂行してきたSS幹部たちを支援する秘密組織「オデッサ」の存在。戦犯追及に及び腰の西ドイツ政府と、対照的に執念を燃やすモサドアラブ諸国と旧ナチ勢力の結びつき。今では半ば常識となっていることですが、本書を読むまでは全く知らなかったわけで、とっても新鮮だったのです。 

 

戦犯のロシュマンが来るべき第三四次中東戦争で果たすはずだった役割。その重要性から全力で彼を守ろうとするオデッサ。それと同じ意味で全力で彼を捕えようとするモサド。これらの事柄と関わってくるミラーの個人的な事情。すべてが相まった結果、ミラーはオデッサへの潜入を試みることになるのですが・・。wikipediaで簡単に検索できる現在では、どの個所が創作であるかは明白なのですが、当時はワクワクしながら読んだものです。 

 

2020/9再読