りぼんの読書ノート

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湖底の城 5巻(宮城谷昌光)

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新たに王となった闔廬のもとで、呉は黄金期を迎えようとしています。これまで呉の外交を担ってきた知識人の李氏の勧めで東の大国・斉に向かい、宰相の晏嬰らと面会してその信を得ます。特筆すべきは、今なお信奉者の多い「孫氏の兵法」の創始者である孫武を呉の将軍として迎え入れたこと。やがて来るべき楚との決戦の準備を整えていくのです。 

 

そして楚と開戦。孫武は期待通りに、情報とスピードを重視した神出鬼没の作戦で楚の大軍を翻弄。国境近くにある楚の衛星国を滅ぼして無傷で凱旋。さらには楚の属国として南方で興隆しつつあった越軍を完膚なきまでに叩きのめします。孫武に預けていた褒小羊は、伍子胥のもとに戻って参謀を務めることになりました。 

 

父と兄を殺害した楚に対する最終決戦の時が近づいています。この時点で伍子胥はおよそ40歳。楚から逃亡した22歳の時には「虎に対する蟷螂の斧」でしかなかった存在が、ついに虎にとどくほど巨大になったのです。 

 

後に続くエピソードをひとつ紹介しておきましょう。苑の商人・范氏に依頼した「黄金の盾」はついに伍子胥に届くことはありませんでした。范氏は賊に襲われて斬殺され、黄金の盾も持ち去れらたのです。誰が賊であったのかは、襲撃を生き延びて越の重臣となった息子の范蠡によって、後に解き明かされることになります。 

 

2020/6