りぼんの読書ノート

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湖底の城 7巻(宮城谷昌光)

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物語の主人公は、ここで伍子胥から范蠡に代わります。もともと范蠡を中心とする「呉越春秋」を描きたかったという著者にとって、ここまでの6巻は長い長いプロローグだったのでしょうか。ここからがタイトル通りの物語となっていきます。 

 

楚の北部に位置する苑の商家に生まれた范蠡は、12歳の時に盗賊に襲われて一家が滅ぼされた大難を生き延び、越に入植していた叔父を頼って会稽に移り住みます。叔父から才能を見込まれて学問に専心した范蠡は、師から推挙されて君主・允常に登用され、太子・句践の側近となります。そして句践が王位に就いた時にはそのまま、越の重臣のひとりになっていました。 

 

この時に越は、呉王闔閭の大軍を迎え撃ちます。越軍は1/5の軍勢でしかありませんでしたが、越にとっての幸運は、呉の孫武はすでに亡く、伍子胥は佞臣・伯嚭によって国政の中心から遠ざけられていたことでした。ここで句践の奇策が身を結びます。なんと緒戦で敗れた兵たちの生き残り百余人を両軍が対峙する最前線で自刎させ、その隙に本体が長躯して呉王の本陣に攻め入ったのです。隙を衝かれて呉王は深手を負い、中軍を率いた太子夫差は潰走。奇跡が起きました。 

 

呉王闔閭はこの時の戦傷がもとで死亡。跡を継いだ夫差が「臥薪」して復讐を誓ったのは、この服喪期間のこと。呉が本腰を入れて復讐戦を仕掛けてくる時が、越にとっても、句践の片腕となっていく范蠡にとっても正念場となるのです。 

 

2020/6