りぼんの読書ノート

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チンギス・ハーンの一族3.滄海への道(陳舜臣)

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第4代の大ハーンとなったモンケは領土拡張政策をやめることなく、次弟フビライには南宋を、三弟フラグにはイラン方面の攻略に乗り出します。軍事的才能と政治的統率力に優れた大ハーンであり、分裂傾向を見せ始めていたモンゴル帝国を再度一体化させるのですが、彼の死後モンゴルの結束は大いに揺らぐことになります。 

 

第3巻の語り手は、フビライです。実兄モンケからの猜疑心に苦しみながら耐え忍び、モンケの死後には末弟アリクブカと争って第5代の大ハーンとなるのですが、この内部抗争は高くつきました。弟フラグはイランを中心にしてイル・ハーン朝を築いて半ば独立し、中央アジアではオゴディの5男ハイドゥが反乱を起こしてモンゴル帝国は事実上東西に分裂してしまったのです。 

 

帝国の重心を東に移したフビライは、南宋を滅亡させて中国に王朝を開き、日本遠征にまで乗り出すのですが、それは第4巻の物語になっていきます。本巻でフビライの即位と並ぶ中心テーマとなっているのは、各地に蟠踞したモンゴル系諸国の「現地化」ですね。現地の有力氏族から妻を娶り、重臣を登用することで、モンゴル色が薄まっていくのですが、とりわけ高度な文明を有していた中国とイランでの現地化が激しかったようです。 

 

2020/4再読