都内の2LDKマンションで共同生活を営む4人の男女。息子を私立大へ進学させるために無理を重ねた両親を愛している21歳の学生の良介。人気俳優とつきあうために上京してきた23歳で無職の琴美。イラストレーターで雑貨店長で嫌味な女を自称する24歳の未来。映画配給会社に勤務する28歳の直輝。
それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも「本当の自分」を装い、「上辺だけの付き合いくらいが丁度いい」と優しく怠惰な続く共同生活をおくってきた4人の関係が、それぞれの語りの中で次第に明らかになっていきます。そして男娼で18歳のサトルという5人目の人物の登場で、微妙なバランスが次第に狂っていくのでした。
しかしそれは、既に内包されていた破綻の芽が、表面化しただけですね。ずるがしこく無気力で流されるだけの人生を歩んでおり、大人の事情などとは縁遠いサトルによって、その芽が育っていったということですね。文庫版の後書きで川上弘美さんが本書を「こわい小説」と評していますが、同感です。内面の見えない他者とは怖い存在なのです。
2019/11