りぼんの読書ノート

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エキスペリエンツ7(堺屋太一)

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団塊の世代』からすでに30年も経っているとは驚きます。当時は「近未来小説」だった、あの本のラストは、過当競争と過剰施設を残して年老いていく世代の悲哀でした。その未来が近づいてきました。

でも実際に高齢化を迎えた団塊世代は、もっとパワフルですね。「高齢化社会」のイメージを変えてしまうんじゃないか。本書は、そんな期待が込められた作品です。

さて「団塊の世代」の方々も、もう60歳近く。高度成長やバブルを生み出した彼らの「仕事生活」も、
そろそろ終わりに近づいています。早期退職を勧められた銀行員、元商社マン、イベントのプロ、建築家、NPO代表などが集まって、消滅の危機にさらされている商店街の再生に取り組みます。コンセプトは「高齢者が歩いて暮らせる街」。

「7人の侍」みたいですが、主人公たちの名前が笑えます。坂本、木戸、中岡、後藤、清川、山形、松園。維新の志士ですね。まぁ、わかりやすいのですが。町内の名家「毛利家」と、チェーン店の社長「島津」を組ませて、大規模再開発を狙う大銀行やゼネコンに立ち向かう。もちろん悪役側は、安藤、会津、近藤など幕府側の名前。^^

「老いてなお元気」なエキスペリエンツ(経験豊富な人たち)の活躍。「仕事の鬼」だった彼らの世代のエネルギーが「住みやすい街づくり」に生かされたなら、ひょっとして日本は変わるのかもしれません。小説としての出来はともかく、読後感は爽やかですよ。^^

2005/9