1990年代のウクライナ。首都キエフでも、まだソ連解体後の混乱は続いていて、普通に生活していても銃撃音や爆発音が聞こえてくる日常。
売れない小説家のヴィクトルは皇帝ペンギンと同居しています。「閉鎖される動物園から引き取った」とかの説明があるけれど、ペンギンのいる生活! プライスレスでシュール!^^
ところがこのペンギンは憂鬱賞にかかっています。もともと南極に適応した動物を、街で飼おうなんて無理ですよね。そんな彼に、新聞社から不思議な仕事が舞い込んできます。それは、まだ生きている有名人の「追悼記事」を書くこと。最初は自由に誰のことを書いてもいいと言われていたのに、徐々に書く相手を指定されるようになってくるのです。やがて、彼が追悼記事を書いた相手が次々と不審死をとげ、彼の書いた追悼記事が紙面を飾るようになるのですが・・。
ペンギンを家で飼うなんていう不思議な生活をおくっているからでしょうか。身の回りで不審な事件が起きているのに、ヴィクトルは何も不審に思っていないのです。いや、感じないフリをしているんですね。もちろん、実際に自分に危険が迫ってくるときには、いくら「見ないフリ」をしても役に立つものではありません。
作者は「この小説に何の寓意もない」と言ってるようですが、私たちも、自分のペンギンを飼っているのかもしれませんよ。
2005/9