りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

Pay Day!!!(山田詠美)

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ハーモニー(兄)とロビン(妹)は、双子の17歳。両親は離婚していて、兄は父とサウスキャロライナで、妹は母とニューヨークで暮らしていました。ロビンが父と兄をサウスキャロライナに訪ねた夏の終わりに9.11テロが起こり、母は行方不明になってしまいます。

かつて母に反抗して父と暮らすことを選んだハーモニーも、サウスキャロライナに移って父兄と暮らし始めるロビンも、もちろん、モト妻を亡くした父も、アル中の叔父も、「母の不在」を通じて、あらためて家族について考え始めます。

それは同時に、自分たちの恋愛について考えること。大切な人をなくした後でも、人は立ち直っていく。それぞれに、さまざまな方法で。そして「少なくとも給料日には幸せになれる」というような、ささやかな楽しみを感じながら、生きていくのでしょう。

この本では「泣くこと」がキーワードになっているようです。家族や恋人の前で泣けるというのは、うらやましいけど恥ずかしい。このあたりは、ニューヨークでもディープサウスでもない、サウスキャロライナの風土にミートしているのかもしれません。

ところで、ハーモニーの恋人候補を自認して、作品の中でズバッと小気味よいセリフを連発する中国系アメリカ人のミシェールを、作者の分身のように感じてしまうのは、あたしだけ?(代田ひかる風)

2005/9 二子多摩川を訪問時に