りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2006-12-01から1ヶ月間の記事一覧

パズル・パレス(ダン・ブラウン)

「ダ・ヴィンチ・コード」で今をときめく作者のデビュー作。 「パズル・パレス」とは、世界最強の諜報機関NSAの別名です。NSAの野望は全ての情報通信を傍受して、解読することであり、NSAの悪夢は政府も解読できない暗号情報が勝手に飛び交うこと。…

ケッヘル(中山可穂)

「ケッヘル番号が、わたしをこの世の果てまで連れてゆく・・」。こんなものすごいコピーで、ストーリーも思いっきりドロドロ。でも最後までテンションが落ちていないのは、お見事です。 女性どうしの壮絶な恋に疲れ絶望して亡霊から逃げ続ける伽椰は、カレー…

帰らざる荒野(佐々木譲)

明治のはじめの北海道開拓史には関心があります。その時代の北海道は、まるでアメリカ西部劇の世界なんですよね。 江戸時代に松前藩と幕府が抑えていたのは、沿岸部だけ。北海道内陸部の本格的な開拓は、「賊藩」の旧藩士をはじめとする政策的移民が開始され…

御三家の反逆(南原幹雄)

御三家とは、尾張、紀州、水戸のこと。徳川幕藩体制が確立された後、御三家の存在は微妙だったようです。 徳川本家に跡継ぎが絶えた場合、将軍を出すための存在とはいえ、時代が下れば血の繋がりも薄くなっていきますしね。この本は、三代将軍家光の時代に早…

シティ・オブ・タイニー・ライツ(パトリック・ニート)

なぜか「移民の物語」には心を惹かれます。「無数の小さな光からなる街」とは、移民が見たロンドンであり、彼ら自身「小さな光」のように輝いているとの想いなのでしょう。 汚い口調でドタバタ劇のように書かれてますが、内容は重い。ロンドンの裏街で探偵を…

わたしを離さないで(カズオ・イシグロ)

キャシーは、「提供者」を世話する、優秀な「介護人」。彼女が生まれ育ったのは、「ヘールシャム」という特別な施設。そこで友人だった、ルースやトミーも、彼女が介護しました。キャシーは、あと数ヶ月で「介護人」を辞めて、自ら「提供者」になる決意をし…

終末のフール(伊坂幸太郎)

「8年後の小惑星衝突で地球は滅亡」と発表されてから5年後。一旦は乱れた秩序も既に回復し、世の中は小康状態を保つ中、普通の人たちは「あと3年」をどう生きるのでしょうか。 同じマンションに住む人たちの、8つのケースが語られます。 ・息子を自殺に…

ファンタジスタ(星野智幸)

中編3作が収められています。 『砂の惑星』で描かれるのは、かつてドミニカに棄民された男と、森に住むホームレスとなって舞う一人芝居とが、言葉を放棄して集団自殺に向かおうとする小学生たちに繋がっていく様子。 表題作『ファンタジスタ』は、首相公選…

歌の翼に(トマス・M・ディッシュ)

高校生の時に出会い何度も読み直した、とってもとっても好きな本でした。「サンリオSF文庫」の廃止によって、2度と手に入らないのですが・・。 「飛翔」とは、精神を開放し、世界を飛び回るフェアリーになること。肉体を残して「飛翔」するためには、「歌…

ミラード(ラフィク・シャミ)

ラフィク・シャミさんは、シリア生まれでドイツに亡命した作家。彼が育ったマルーラ村はシリアの奥地にあり、峻厳な山に囲まれて周囲から孤絶しているため、イスラム教とアラビア語の世界の中で、例外的にキリスト教徒が多く、アラム語が使われているそうで…

3001年終局への旅(アーサー・C・クラーク)

『2001年宇宙の旅』シリーズの最終作品にあたります。 「あの映画」は有名ですよね。荘厳な音楽や、投げ上げた骨器が宇宙ステーションに変わる映像。人類に文明の夜明けをもたらしたモノリスの存在。木星付近に発見されたモノリスを探索に行くディスカバ…

沖で待つ(絲山秋子)

絲山さんが芥川賞を取ったときには「女性総合職の小説」として話題になりましたが、「こういうケースもある」ってことでしょうか。 「仕事のことだったら、そいつのために何だってしてやる」。そんな信頼と友情を寄せていた同期男性の突然の死。お互いにどち…

No.1レディーズ探偵社、本日開業(アレグザンダー・マコール・スミス)

プレシャス・ラモツエ。34歳。ボツワナでただひとりの女探偵。かなり太め、バツイチ。ひとよんで「サバンナのミス・マープル」。この言葉に引き付けられました。いったい、どんな探偵小説なんだろう。読んでみたら、アフリカならではの素朴な事件がいっぱ…

そろそろくる(中島たい子)

『漢方小説』の作者による、2冊目の小説です。この本のテーマも、女性の身体と心。主人公のキャラも、作品の雰囲気も、とっても似ています。 いったい何が「そろそろ来る」のでしょうか。それは女性なら避けて通れないもの。「生理」なんですね。彼女のPM…

グリム兄弟(高橋健二)

図書館でパラパラめくってみたら、途中に「童話」も載っていて軽い本かと思って読み始めたら、本格的な評伝でした。「童話」部分は、初版から決定稿まで、どう表現が変わっていったのかを、例をあげて検証していただけだったのです。でも、「赤ずきん」「ヘ…

揺籃の星(ジェイムズ・ホーガン)

いわゆる「とんでも科学」というジャンルがあります。科学的にありえないことを、大げさに理論付けて吹聴する分野。この本の前提になっているのも、そんな話。でもSFですから、おもしろければ、いい~んです。(カビラ弟風) 土星の衛星に移住した人類が、…

石鹸オペラ(清野かほり)

昼ドラのことを「ソープ・オペラ」と言うことがあります。洗剤メーカーがスポンサーになることが多いからなんですね。でもこの本は、歌舞伎町のソープランドで働くリカの話。彼女を目あてに訪れる客は、オヤジ、ヤクザ、オタク、高校生。私生活で付きあう男…

俯き加減の男の肖像(堺屋太一)

未曾有の経済成長を遂げた、元禄時代。その後150年間、江戸時代の経済は停滞してしまいます。でも当時を生きた人たちには、そんなことわかりませんよね。成長を経験してきたばかりの者たちが経験する「下り坂の時代」。そんな時代に野望を実現しようとし…

孔子(井上靖)

井上靖さんの絶筆です。今から2500年前の春秋・戦国時代に現れた聖賢「孔子」。彼の死後、孔子の言動を弟子たちが編纂したのが「論語」ですが、この本は「論語」の成立過程を再現しているかのようです。 孔子没後33年。孔子晩年の弟子も既に年老いてい…

ワールドカップの世界史(千田善)

W杯開催直前ということで手にとってみました。1930年の第1回大会から、2002年日韓大会までの全ての大会を国際関係の視点から振り返った本です。「サッカーはボールを使った戦争」とも言われるそうですが、国内政治、国際政治とこんなに深く関わっ…

ゲド戦記Ⅰ 影との戦い(ル=グィン)

『リング』、『ナルニア』と並んで3大ファンタジーとのこと。スタジオ・ジブリによる映画も、そろそろ劇場公開ではないでしょうか。 無数の島々と海からなるアースシーを舞台に繰り広げられる、並外れた魔法の力を持つ少年ゲドの不思議な戦い。戦う相手は、…

匂いたつ官能の都(ラディカ・ジャ)

ナイロビに育ったインド人のリーラは17歳。父を亡くし母に捨てられ、叔父を頼って単身パリに渡るものの叔母にうとまれ、結局は飛び出してしまうことになります。「正式なビザもない外国人」という不安定な立場ながら、彼女には、人並み以上に鋭敏な「匂い…

ゆめつげ(畠中恵)

楽しい和風ファンタジー『しゃばけ』の畠中さんの、和風ミステリー。上野の小さな神社で神官をつとめる兄弟が、事件に巻き込まれます。 兄の持っている「夢告」の能力を見込まれて、ある大店の跡継ぎ探しを頼まれるのですが、占うたびに違う結果が出てしまっ…

六番目の小夜子(恩田陸)

恩田さんのデビュー作。「夜のピクニック」のような学園小説ですが、少々ホラーっぽい。 ある高校に伝わる「学園伝説」。そこでは、毎年「サヨコ」と呼ばれる役割が密かに引き継がれる。誰が「サヨコ」かは、卒業した前任者を除けば本人しか知らない。3年の…

若者殺しの時代(堀井憲一郎)

思わずドキッとするシリアスなタイトルですが、著者は、あの「ずんずん調べる」堀井さん。軽い文章で綴られた、サブカルチャー論。 でも、内容は意外とシリアスなのです。現代は「若者というだけで損をする時代」? その仮説を証明するために、当時の週刊誌…

漢方小説(中島たい子)

ブログ仲間のヘザーさんと同じ頃に読みました。こういう偶然にはうれしくなります。 元カレが結婚すると聞いてから、体調を崩した「みのり」31歳。町医者でも大学病院でも原因がわからず、精神面を疑われてしまいます。彼女が行き着いたのは漢方診療所。病…

海賊モア船長の憂鬱(多島斗志之)

先に読んだ『海賊モア船長の遍歴』の続編です。前作で、イギリスの東インド会社に巣食う秘密結社と結託していた宿命のライバル「海賊ブラッドレー船長」を倒したモア船長の一党は、いまやインド洋では押しも押されもせぬNo.1海賊。ただし、愛船「アドベンチ…

ヒストリアン(エリザベス・コストヴァ)

「ヒストリアン(歴史学者)」というタイトルと出版時期から、また「ダ・ヴィンチ・コード」の二番煎じか・・と思いましたが、系統の異なる本でした。「歴史ミステリー」というよりも「ゴチック・ホラー」。 ヴァンパイア伝説を探求する過程で行方不明になっ…

イラクサ(アリス・マンロー)

短編集だけどひとつひとつの物語が重い。それぞれの短編に一生分の出来事が詰まっている。だから次の段落で、いきなり何年も後の話に飛ぶこともある。人生っていうのは、不連続なエピソードの集合体? もちろん違います。自分の人生のどの瞬間も無駄なものは…

嫌われ松子の一生(山田宗樹)

中谷美紀主演で映画化されて話題を呼んでいます。めちゃくちゃ不幸な、転落の一途をたどる女性の物語ですが、ファンタジーのような美しい仕上がりになっているとのこと。 松子の一生は「逆ファンタジー」なんですよね。大学を卒業して教師になりながら、セク…