りぼんの読書ノート

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嫌われ松子の一生(山田宗樹)

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中谷美紀主演で映画化されて話題を呼んでいます。めちゃくちゃ不幸な、転落の一途をたどる女性の物語ですが、ファンタジーのような美しい仕上がりになっているとのこと。

松子の一生は「逆ファンタジー」なんですよね。大学を卒業して教師になりながら、セクハラと悪意ある中傷で退職。その後の転落の軌跡は、まるでジェットコースターのよう。

同棲相手の作家崩れの自殺。愛人生活の破綻。トルコ嬢への転進。不実なヒモを刺殺して服役。ヤクザになった元教え子との同棲。彼に巻き込まれての再度の服役。元教え子にも去られた後の失意の生活から立ち直ろうとした矢先に・・・。

韓国ドラマよりすごい展開ですね。堕ちてゆく美学と、約束された不幸の結末。こうまでされると、やっぱり「ファンタジー」としか言いようがない。これを、現代日本を舞台にした物語に仕立て上げるというのも凄い。

松子の「幸福の基準」が何だったのか、しばし考えてしまいます。一言で言ってしまえば「献身」か。尽くしても尽くしても報いられないけど、身を捧げることが幸福だったのでしょうか。それじゃ、まるで「聖女」じゃないですか。あれっ、そういう狙いもあるのでしょうか。

本当なら松子がおくって然るべきだった「陽の当たる人生」は、明日香(松子の甥の彼女)が実現させるのかもしれませんね。

2006/5