りぼんの読書ノート

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海賊モア船長の憂鬱(多島斗志之)

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先に読んだ『海賊モア船長の遍歴』の続編です。前作で、イギリスの東インド会社に巣食う秘密結社と結託していた宿命のライバル「海賊ブラッドレー船長」を倒したモア船長の一党は、いまやインド洋では押しも押されもせぬNo.1海賊。ただし、愛船「アドベンチャー・ギャレー号」は、ガタがきています。

18世紀インド洋の政治情勢は、一段と厳しくなっています。新興勢力オランダがイギリスをしのぐ大勢力になっており、表面上は同盟国でも水面下で争いを続ける両国に加えて、劣勢の挽回に必死のフランスと海賊たちとが、四つ巴の抗争中。

そこに波紋を投げかけたのが「伝説の宝石」。アン女王に献上するはずが、責任者ともども行方不明になってしまい、本国からは、真相を探る密命を帯びた青年と、夫の安否を気遣う責任者の若妻がやってくるのですが・・。

モア船長率いる海賊は、帝国主義に対するアンチテーゼですね。植民地を収奪し、占領民から搾取する欧州列強帝国に対して、まるで植民地の独立のために戦っているかのような描かれ方。しょせんは海賊だし、どっちもどっちなのですけどね。

はるばるインドまでやってきた「若妻」の正体が、英蘭の正規艦隊を相手にする海戦シーンに色を添えます。でも、この種の本の常として、1冊目には及びませんね。モア船長のイメージは完全にジョニー・デップ。本国からの青年はオーランド・ブルームだし、謎の若妻にはキーラ・ナイトレイが思い浮かんでしまいます。典型的な人物関係です。

2006/5