舞台はイスラエル。アラブ系でありながらイスラエルに帰化して、外科医を務めるアミーンに突然もたらされた残酷な知らせ。自爆テロの現場で、妻のシヘムの遺体が発見され、しかも彼女自身が自爆テロ犯である可能性が強い・・。
アミーンは、テルアビブの病院で、たったひとりのアラブ人医師。偏見と差別を乗り越えて、エリートとして上り詰めてきました。妻のシヘムも、結婚してから15年の間、夫と苦労をともにして、やっとつかんだ幸せを満喫し、家を飾り付けたり、海外旅行を楽しみにしていた様子だったのに、どうして自爆テロなんか起こすに至ったのか・・。
それだけに、両者を隔てる壁の現実が、いっそう重くのしかかってくるのです。読書が「世界を開いてくれる扉」であるとしても、この本が開いてくれたのは、なんと厳しい世界へ通じるドアだったのでしょう。今月のお勧めの一冊です。
2007/4