りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

黄昏の百合の骨(恩田陸)

イメージ 1

毎回、静かに謎を巡る物語が展開する「理瀬シリーズ」は好きなのですが、この本はしっくりきませんでした。

ストーリーは「可もなく不可もなく」といったところでしょうか。「自分の死後、理瀬が半年この家に住まなければ処分してはいけない」との亡き祖母の奇妙な遺言で、「魔女の館」と噂される洋館に住むことになった高校生の理瀬の周りで、不思議なことが起きはじめます。なぜか洋館に絶えることなく飾られる百合の花。行方不明になる少年。毒をもられて死んでしまう猫。そして、ついに死者も・・。

理瀬の叔母にあたる梨南子と梨耶子という不思議な姉妹が狙う、洋館に隠された正体不明の「ジュピター」を巡って、登場人物たちの思惑が交錯していきます。そんな中で理瀬は、洋館の秘密を解き明かそうとするのですが・・。

この本がしっくりこなかったのは、主人公の理瀬が冴えないから。『麦の海に沈む果実』で、理瀬の将来の姿は、既に明かされています。「本心を押し殺して孤独に生きるクール・ビューティ」という、理瀬の
キャラは今までどおりなのですが、簡単に危機に陥っちゃうんですね。誰かに助けられるのではなく、100%自力で難関を乗りこえてこそ、理瀬の魅力が際立つと思うのですが、どうでしょう。

2007/4