りぼんの読書ノート

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赤朽葉家の伝説(桜庭一樹)

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皆さんがお薦めしているだけのことはありますね。とっても面白く読みました。作者の故郷である鳥取の架空の町の、製鉄で財を成した一族の物語。といっても男たちは影が薄い。これは一族の女の物語です。

中国山脈の奥に隠れ住むサンカから輿入れした、千里眼の祖母・万葉。中国地方を制覇したレディスのボスから少女漫画家となった母・毛毬。そして偉大な祖母と母を持ちながら、何者にもなれず悩む娘・瞳子

3代の女性が織りなす物語は、戦争直後から現代までの、時代の空気を写しだす鏡のよう。でも普通の鏡じゃありません。凹面鏡か、凸面鏡か、はたまた万華鏡なのか、歪んで引き伸ばされて、時には砕け散ったような、時代の影像を見せてくれる鏡です。だから、おもしろい・・。

彼女らの友人たちもいいですね。万葉と、互いに「いじめっ子」、「ひろわれっ子」と呼び合いながら、生涯を友としてすごした、かつてのライバル・黒菱みどりも、後に毛毬を手厳しく裏切ることになる、大親友の蝶子も魅力的です。

もうひとり、忘れてはならない重要な女性がいました。万葉の子供に、運命を見据えたような名前をつける、曽祖母タツタツ命名したのは、長男の泪、長女の毛毬、3女の鞄、2男の孤独。(2女が抜けている理由は、本書を読んでください。)

タツが孫の瞳子につけようとした名前は「自由」でした。瞳子は一族の歴史から自由になる運命を実現するのでしょうか。赤朽葉家の遠い祖先は「もののけ姫」でタタラ製鉄集団を指導して神々の棲まう山を開発した、エボシ御前だったのかもしれません。^^

2007/4