アフガニスタンの首都、カブールで生きる2組の夫婦の悲しい物語。国連軍の侵攻前、タリバーンのイスラム原理主義による統治の下で「生きる」ということが、ごく普通の人々の心を荒ませていく様子が圧倒的な筆致で描かれます。
拘置所の看守アティクは、重病に冒された妻ムサラトを離縁するよう友人たちから勧められ、悩んでいます。(夫の邪魔になった妻は棄てられるのが「常識」の世界!!!)
知識人であるモフセンは、売春婦の公開処刑の場に出会わせた際に、日ごろの鬱憤を晴らすかのように、思わず死刑囚に投石したことを妻のズナイラに打ち明けて、愛想をつかされてしまいます。(処刑といっても、実態はリンチ!!!)
やがて、ズナイラは投獄されてしまいます。チャドルを取った彼女の美しさに心を打たれ、彼女を守りたいと思うようになったアティクに対して、妻・ムサラトは驚くべき提案をするのですが・・。
チャドルですっかり顔を隠さなければ、女性は外出もできない世界。チャドルですっかり顔を隠してしまったら、もう誰でもない女性たち。このような世界は、まだ実在しています。このような世界で紡がれた物語は、人間の弱さのみならず、ある種の尊さも描き出し、おぞましさと美しさの両面から、衝撃を与えます。200ページにも満たない、短い本ですが、お奨めの1冊です。
2007/4