りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

老人と宇宙(そら)ジョン・スコルジー

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「ハードSF」とは、人間ドラマよりもSF世界の描写に重点を置いた小説のこと。本書は、紛れもなく、ハインラインの精神を受け継いだ、正統派の「ハードSF」作品ですね。

遠い未来、宇宙に進出した人類は、異星人たちと激しく争っていました。人類の辺境コロニーを守る防衛軍が、志願兵を募集しているのですが、なんとその条件は、75歳の老人限定だったのです。もちろん、ヨボヨボの老人たちが、そのまま闘えるわけではありません。彼らは、宇宙での戦闘に適するように強化されて若返った身体をもらい、10年間の任務に就くことになります。

では、なぜ老人限定なのでしょう。ひとつの理由は、宇宙戦争が激しい消耗戦であるということ。10年後の満期除隊率は2~3割であり、大半が戦死してしまう戦闘に志願して貰うには、伴侶に先立たれ、人生に疲れ、諸々の病気を持って先の短い老人たちに、若返った身体を与える特典が必要だったのです。

でも、もうひとつの理由のほうが、もっと重要かも知れません。人生経験を豊富に持った者でないと、「人類の未来のために闘う」ことに意義を見出せなくなるというのです。やっぱり、そうなのでしょうか。

残虐な宇宙人が無数に登場したり、科学的説明皆無の超高速航行や超兵器が登場したりと、ストーリー的には派手なスペースオペラですが「老人たちに宇宙戦争を戦わせる」という一点で、この作品は成功です。主人公たちが、新しい肉体や新しい環境にとまどう様子は伝わりますし、ラストがラブストーリーになっちゃう点も、意外さがポイント高いかな。^^

2007/4