りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

消えた少年たち(オースン・スコット・カード)

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文庫で900ページ近い長編ですが、最後の20ページが圧巻です。逆に言えば、そこまで引っ張っていける作家の力量が凄いわけです。

ゲームデザイナーでモルモン教徒のフィリップは、ストゥベンというノースカロライナの町に、家族で引っ越してきましたが、たちまち、あちこちで「敵」を作ってしまいます。フィリップの名声と実力に嫉妬し、彼を貶める工作を陰で行う上司。7歳の息子、スティーヴィを差別してイジメを助長した女性教師。地元の教会を牛耳り、信者に悪影響を及ぼしているシスター。幼い娘のエリザベスに対し、猥褻行為を想像するプログラマー。自らを神と信じ、彼の妄想を否定するフィリップを逆恨みする青年。まったく、なんちゅう町だ!それだけではありません。この町では、行方不明の少年が頻発していたのです。

フィリップと妻ディアンヌは、3人の子供たちを守ろうとしますが、学校に慣れないスティーヴィは、教師のいじめにもあって沈みがち。空想の友人たちとばかり遊ぶようになってしまうのですが、不思議なことに、友人たちの名前は、行方不明の少年たちと一致していました・・。このあたり「スティーブン・キングの世界」のようです。なぜかフィリップの家に、しばしば昆虫や蜘蛛が大発生するなんていう不気味なところも、その雰囲気を助長します。

そしてラストの20ページで衝撃の真相が明かされます。カードはSF作家と思って読んでいたので、こんな展開になるとは想像できず、完全に意表を衝かれてしまいました。そして、わずか7歳のスティーブィの健気さにも・・。

2007/4