りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2007/3 ローマ人の物語15(塩野七生)

塩野七生さんの渾身の大作、15年に及んだ『ローマ人の物語』が完結! このシリーズを読み始めたときには、完結予定の15年後なんて、気が遠くなるほど遠い未来に思えたものです。あれからの15年間の歳月を思うと、一読者としても感無量です。
1.ローマ人の物語15「ローマ世界の終焉」(塩野七生)
キリスト教や、フランス革命の理念や、非戦平和や民族自決などの近代的なフィルターを一切通さずに、ローマの偉大さを論じきりました。「多民族・多宗教・多文化がローマ法の下で共存共栄」できる「征服者を同化しえる寛容さ」を内包した合理的なシステムを作り上げたこと。私たちの世界は、ローマ以降、そのような国家を持てないでいるのです、

2.イングランド・イングランド (ジュリアン・バーンズ)
ワイト島に、イングランドの全てを集めたテーマパークを作ってしまう。ビッグベン、ロンドン塔、ロビン・フッドに、人気サッカーチーム! そして、バッキンガム宮殿には本物の英国王室に移住してもらうのです。一方で観光客を奪われた本物のイギリスは衰退の一途をたどります。本書で繰り返し現れるテーマは「本物とは何か?」という問いですね。

3.夜は短し歩けよ乙女 (森見登美彦)
「黒髪の乙女」に想いを寄せる「先輩」の可愛いストーカーぶりが最高! 京都をそぞろ歩く乙女を追う先輩は彼女の物語の一部となることもなく、ついには路傍の石ころたる運命に甘んじるしかないのでしょうか。でも先輩には、現実と妄想とを混沌の中で融合させてしまうという、恐るべき必殺技があったのです。^^

4.大統領の最後の恋 (アンドレイ・クルコフ)
何の目的もなく女の子ばかり追いかけていた男が、ひょんなことから政界入りして、ウクライナの大統領にまで上り詰めてしまいますが、真の愛情は手に入らないまま。そんな大統領の最後の恋とは? 『ペンギンの憂鬱』で、ソ連崩壊後のウクライナの不条理世界を描いた著者の最新長編。同じ新潮クレストブックスからの出版です。

5.薄闇シルエット (角田光代)
角田さんの本は、ある種の女性にとっては、麻薬かもしれません。結婚していようが独身だろうが、働いていようが専業主婦だろうが、 30代の女性がふと感じる「自分の人生、これでいいのか感」を上手に理解してくれて、「これでいいのよ」と答えてくれる。本書もそんな一冊です。でもそれで満足しちゃダメでしょうけどね。



2007/4/3