りぼんの読書ノート

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夜明けのウエディングドレス(玉岡かおる)

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現在では結婚式の衣装というとウェデングドレスを思い浮かべる人が大半かと思いますが、洋装が和装を上回ったのは、意外なことに1993年のことだそうです。1981年のチャールズ皇太子とダイアナ妃の結婚式のTV中継がきっかけとなって、ドレス派が急増したとのこと。本書は、日本初のブライダルファッションデザイナーとして、ブライダルビジネスを牽引してきた桂由美さんをモデルとする小説であり、主人公の名前は佐倉玖美。

戦時中から白馬の王子様や美しいお城が登場する物語に憧れてきた玖美は、戦後になってファッションドレスのデザインを始めたものの、当時の和装中心の婚礼業界では全くの異端児です。草創期の苦労を乗り越えて「ずっと仰ぎ続けてきた虹を地上に引き寄せた」過程は、まるで朝ドラのような女性の社会進出物語。

本書を特徴づけているのが、もうひとりのヒロインである沢井窓子の存在です。玖美とは女学校の同級生であり、関西で婚礼貸衣装業を始めた窓子の人生が、再び玖美の人生と交差していきます。窓子のモデルは、ユミカツラ社のフランチャイズ店となった60店の経営者の方々だそうです。

高度経済期に発展して年々派手になってきたブライダルビジネスには賛否両論ありますし、少子高齢化の中では斜陽産業化しつつあるのかもしれません。しかし、本書のテーマはそういうことではありませんね。「戦後のウェディング史」を背景として、「夢を実現した女性たち」という普遍的なテーマを描いた作品として読むべきなのでしょう。

2019/4