破滅的なタイトルでありながら聞き覚えがある響きと思ったら、同名の映画が昨年秋に公開されていました。本書は監督兼脚本家による、同映画のノヴェライズだったのです。
主人公は、声が小さすぎることを悩んでいるストリートミュージシャンの明日葉ふうか。バンドも恋人も失ってしまったふうかの前に現れたのは、驚異的な歌声を持つカリスマロックスターのシン。しかし彼の声は「声帯ドーピング」という禁断の方法で作られていたものであり、彼の喉は限界を迎えようとしていたのです。
映画でシンを演じたのが阿部サダヲであることから想像できるように、本書の展開はコミカルでハチャメチャです。コンサートをドタキャンしたシンと、彼に振り回されるふうかの逃亡劇に登場するのは、前時代的ロッカーのザッパおじさんとデビルおばさん、謎めいた女医に血まみれのようなよろこびソバ、そして韓国の花火工場。意味不明なシーンが多いのですが、そこはロックですからね。それでもラストは意外と普通に纏まりました。そこは映画だからなのでしょう。
2019/2