りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

カーテンコール(加納朋子)

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経営難で今年限りの閉校が決まっていた女子大で、限界まで下げられたハードルすらクリアできず、どうやっても卒業できなかった留年者たちが発生。彼女たちは、理事長の温情で半年間の猶予を与えられ、敷地内の寮に住み込みで補修を受けることになります。それぞれワケアリの女学生たちは、外出もネットも禁止、食事も起床も睡眠も管理された2人部屋という監獄のような生活環境で、自分を見つめ直していくのですが・・。

一話ごとに語り手が変わる連作短編集です。2人部屋の組み合わせもいいですね。LGBTの桃花とラノベ小説家志望の真美。迷走神経障害症の朝子とナルコレプシーの夕美の睡眠障害ペア。過食症の千帆と拒食症の茉莉子。フーテンの夏鈴と謎の優等生・菜々子。そしてなぜか理事長家族と同居する自殺願望がある玲奈。

それぞれ自分が抱える事情で手一杯で、他者に目を向ける余裕がなかったり、生活習慣が乱れまくったりしていた者たちが、規則正しい強制同居生活の中で自分を取り戻していくのです。その影には、ひとりひとりに目配りを絶やさない理事長の存在があったのですが、彼にもまた哀しい過去があったのでした。

本書の真の主人公は理事長ですね。彼がこれほどまでに「全員卒業」にこだわった理由は、最終章で明らかになります。そして表紙に描かれたひまわりの絵の秘密も。ひまわりの花言葉は「あなたは素晴らしい」なんですね。大病を患った著者だから書ける、優しい作品でした。

2019/2