りぼんの読書ノート

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コゼット 下(ローラ・カルパキアン)

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レ・ミゼラブルの続編である本書では、上巻は長いプロローグのようなものでした。しかし『下巻』ではいきなりクライマックスシーンが訪れます。ルイ・ナポレオンによるクーデターを阻止するための闘いでバリケードに籠ったマリウスが、一発の銃弾に倒れてしまうのです。武器を持たずに弁論のみで兵士たちに立ち向かった、夫の勇敢な姿は、悲しみに暮れるコゼットの胸に深く刻み込まれました。

ナポレオン三世から狙われ、長男ジャン=リュックは仇敵ゼルマに堕落させられて奪われ、娘ファンテーヌをイギリスに逃がしたコゼットは、夫の遺志を継いで孤独な闘いに身を投じます。貧民階級の中に身を落とし、恵まれなかった幼少期のあだ名「ヒバリ」と名乗って、パリ大改造のバブル景気と偽の自由に酔いしれる人々の目を覚ますためにペンを執るのです。

かつてコゼットが救った元泥棒の青年ムクドリや、息子ジャン=リュックが棄てた女優ニコレットや、廃刊にされた「ラ・リュミエール」の関係者などの味方にも励まされて、「ヒバリ」名で闇出版された反ナポレオン寓話は民衆に膾炙しますが、それだけでは政権はびくともしません。しかしコゼットのもとに、マリウスは生きて囚われているとの情報がもたらされます。

はたしてコゼットはマリウスと再会できるのか。息子ジャン=リュックを再び取り戻すことができるのか。娘ファンテーヌとムクドリの身分を越えた愛は成就するのか。そしてナポレオン三世への闘いはどう展開していくのか。「虚飾の幕切れ」とのタイトルを持つ最終章に向かって走り続けるコゼットの姿は、レ・ミゼラブルでの印象をいい意味で裏切ってくれました。みすぼらしい姿になっても、愛と闘争心を失わない「羽根ペンのヒバリ」はカッコ良すぎます。

2018/11