りぼんの読書ノート

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アインシュタインの夢(アラン・ライトマン)

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スイス・ベルンの特許局技官であったアインシュタインが、特殊相対性理論の第一論文を完成させたのは、1905年6月のことでした。当時26歳であったアインシュタインが、論文の発想を得てからの2カ月間に「見たかもしれない夢」を現役物理学者が綴った小説は、まるでSFです。

それらの夢はどれも「時間」に関する夢でした。時間が制止した世界。時間が逆行する世界。時間が加速される世界。時間が破行的に進む世界。時間が循環する世界。因果律が失われた世界。終焉が予定された世界。短命者の世界。不老不死の世界・・。30編のショートショートですが、現代SFでも用いられるようなテーマや、全くの奇想もあり、それらがベルンの街の人々の行動として表現される点がユニークです。

ちなみに「1905年5月29日」の夢は、アインシュタインの相対的時間観念を表現したパロディですね。速度と時間が相関する世界が描かれています。なお幕間に登場してアインシュタインと会話を交わす親友のベッソ―とは、アインシュタインの討論の相手を勤めた特許局の同僚であり、第一論文の謝辞を捧げられた実在の人物です。

2018/7