りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

がっかり行進曲(中島たい子)

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運動会、合唱祭、学芸会、遠足などの大切な日に限って、ぜんそくの発作がでてしまう実花の毎日は、「がっかり」することばかり。勉強も運動も不得意だし、全然美人でもないし、特別仲の良い友人もいないし、あだ名だってついていない。音楽や読書は好きだけれど、同じものを何度も繰り返してしまうだけ。

「そんな少女が成長していく物語」・・ではありません。確かに小学生から、中学生、高校生へと進んでいく段階が描かれるのですが、本書のテーマは「成長」ではないのです。実花に必要なのは、「がっかり」な自分を肯定してもらうことだったのです。

小学校6年生の時に昔のイギリスのバンドの曲を聴き、「そのままにしときなさい」という歌詞だと知って生きることが少し楽になる。高校生の時に以前の担任の教師から「たくさんがっかりしたんだから、君は無敵だよ」と言われて、ちょっとだけ自信を持つ。

確かに、無駄な努力や苦行をする必要なんてありませんよね。そういうことも決して無意味ではないのですが、全員それに付き合わせようとすると、それこそ嫌な社会になってしまいます。漢方小説以来、「等身大の自分自身」を描き続けている著者の作品には、いつもほっこりさせられます。

2018/5