りぼんの読書ノート

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負けた者がみな貰う(グレアム・グリーン)

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文学作品と、エンターテインメント作品をはっきり区別していたという著者ですが、本書は明らかに後者であり、実際に映画化もされているとのこと。邦題は「ハネムーンはモンテカルロで」。

恋人ケアリーとの結婚を決めた、冴えない会計係の男性が主人公。イギリスの片田舎でつつましい結婚式を予定していたものの、気まぐれな社主からモンテカルロで結婚式を挙げて、彼の所有する豪華ヨットで地中海クルーズを楽しむよう、変更を迫られてしまいます。

社主には逆らえずモンテカルロにやってきた2人でしたが、肝心の豪華ヨットは待てど暮らせど到着せず。豪華ホテルで所持金を使い果たした主人公は、一獲千金を目論んでカジノに乗り込みます。普通なら負けパターンですよね、ところが怪しげな必勝システムなるものを入手した途端に勝ちまくり、ついには社主をしのぐ会社の株まで手に入れそうになるのです。しかし全てがうまくいくことなどありません。ギャンブル狂になった男は、新妻のケアリーから愛想をつかされてしまうのですが・・。

この種の物語はハッピーエンドに決まっていますね。しかもタイトルが「負けた者がみな貰う」なのですから、愛情と財産を天秤にかけていた主人公が窮地を脱出する方法まで、なんとなく読めてしまいます。しかし、約束を忘れていたくせに、スマートな女性との付き合い方まで伝授してしまう社主は、やりたい放題ですね。晩年まで共産主義に共感していた著者ですが、エンターテインメントは別物と割り切っていたのでしょう。

2018/3