りぼんの読書ノート

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恋するソマリア(高野秀行)

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2013年に講談社ノンフィクション賞を受賞した謎の独立国家ソマリランドの続編です。ソマリ人とソマリ社会の魅力に嵌りこんだ著者は、ほとんど片思いのような状態ながら、ソマリア各地を再々訪。ベテランジャーナリストのワイヤッブや、ケーブルTVのモガディショ支局長を勤める若い剛腕美女ハムディらとの再会を果たし、「謎の国」の奥深くへと足を踏み入れていきます。

日本の中古車輸出業者の宣伝は失敗したものの、一般家庭の台所潜入には成功。謎のソマリ雑炊「シューロ」の作り方もマスター。しかし、興奮性物質を含むカートの葉の食べ過ぎで猛烈に便秘。そんな状態なのに、南部ソマリアの戦闘地帯を視察する知事に、他のジャーナリストらとともに同行。砂漠が広がる北部ソマリランドに対して、南部ソマリアの肥沃さを実感できたものの、帰路にイスラム過激派アル・シャバーブの襲撃を受けてしまいます。

平和なソマリランドのジャーナリストが抱えるジレンマもシリアスですが、危険な南部ソマリアとは筆画になりませんね。それまでにも著者の知り合いが殺害されたりしているのですから。やがて剛腕美女ハムディもヨーロッパへと亡命することになるのです。

著者は「ドライなソマリ人に肩入れしても報われることはない」と何度も痛感させられます。しかしそれは、世界中どこにいても、どんな境遇にあっても、ソマリ人特有の氏族社会への帰属意識は揺るがないという、独特の人生観から来ているものと達観するに至ります。もはや、ソマリアに対する著者の一方的な愛情も、揺らぐことはないのでしょう。冷静に見れば、少々イタイようにも思えるのですが・・。

2018/3