りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ピンポン(パク・ミンギュ)

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語り手である中学生の少年の仇名は「釘」。いじめっ子のチスから、毎日「釘を打つ」ように頭をガンガン殴られているから。彼の唯一の友人は、やはりいじめられっ子のモアイ。釘は思うのです。いじめは、直接手を下さずに「多数のふり」をしている生徒たちの同意がなければ成り立たないと。そして、自分と接している人類であるクラス全員から「アチャー」されている自分は、全人類から「アチャー」されているに等しいと。

原っぱに放置されている卓球台を見つけた釘とモアイは、「卓球人」セクラテンから「卓球史」の伝授を受けることになります。彼によると、卓球は戦争であり、原始宇宙の生成原理であり、人類は「結果」を出すまで卓球をすることが義務付けられているというのです。

そしてある日、空から巨大なピンポン玉が落ちてきて、地球は巨大な「卓球界」になってしまいます。そして人類をインストールしたままにするのか、アンインストールするのかとの選択権を賭けて、釘とモアイは、ネズミと鳥のペアーと対戦して、果てしない戦いを繰り広げることになってしまうのですが・・。

問題は、どちらが勝つかではなさそうです。全人類から「アチャー」されている釘とモアイが人間社会を消し去る権利を得た時にどのような選択をするのかが、問題なのです。一貫して「この世の悪」と「それに対抗する力」について描いてきたという著者が、2人に何を思わせるのか。疾走感あふれる一人称で綴られる、韓国発の「脳内スマッシュ炸裂小説」です。

2017/10