りぼんの読書ノート

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古代への情熱(シュリーマン)

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19世紀末にトロイア、ミケーネ、ティリンス遺跡を立て続けて発見した、シュリーマンの自伝です。ペロポネソス半島のコリントとナフプリオンの間にあるミケーネとティリンスには行ったことがあるので、懐かしく感じながら読みました。

少年時代に読んだホメロスを信じてトロイア発掘という夢を抱き、無学の徒弟から出発して財をなし、50歳近くなってから発掘調査を開始したシュリーマンの生涯は有名です。一方で、無許可で発掘を開始したとか、遺跡を発掘ではなく破壊したとか、財宝を勝手に売りさばいたとかの「罪」を指摘する人も多いようです。果ては「少年時代の夢の実現」という部分ですら、後付けの捏造とも言われるほど。

これらの批判のかなりの部分は、その当時は考古学が未発達であり、発掘技術に限界があったことによるのでしょう。無許可発掘とか財宝所有権の問題も、法の未整備に拠るところが半分くらいはありそうです。考古学の基礎を作ったペトリはシュリーマンより30歳若く、彼の弟子でツタンカーメンを発掘したハワード・カーターは50歳も若いのです。

一方の功績として、「神話的な伝説が実在したことを示して、多くの人の考古学への興味を開いた」ことは間違いありません。シュリーマンの自伝には虚言や誇張や正当化もあったのでしょうが、宣伝効果は抜群だったのでしょう。否定してしまうには、あまりにもドラマティックですので。

2017/3