りぼんの読書ノート

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燃える果樹園(シーナ・マッケイ)

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8歳の少女エイプリルが引っ越した先は、ロンドン郊外のストーンブリッジという田舎町。少女の両親は、そこでティールームを営むことにしたのです。お店の経営はうまくいかず、その町に長く住むことはなかったのですが、そこで少女は生涯忘れられない親友と出会うことになりました。

その少女ルビーは冒険心と独立心に満ちていて、魅力たっぷり。すぐに仲良くなった2人の少女が見つけた秘密基地は、郊外の果樹園の中に打ち捨てられた貨車の車両。貧しさも寂しさも共有した少女たちが、幼い友情を育んでいく様子が、丁寧に描かれていきます。

しかしルビーは、父親から虐待を受けていたのです。一方のエイプリルは、店の常連客となった変態老人から執拗に迫られていることを、両親にも言えません。彼女たちの友情の背景に存在していた性や暴力の問題は、後に起きる事件に繋がって行くのでした。

本書は、初老に差し掛かったエイプリルが、50年後にストーンブリッジを訪れる場面から始まります。生涯忘れられない思い出とは何だったのか。なぜ少女たちは半世紀もの間、音信不通になってしまったのか。そしてルビーはどうしているのか。美しい物語です。

2016/9