ウォール街に事務所を構える日本人投資家を主人公にして、サブプライムローン問題をテーマとした小説です。とはいえ、サブプライム問題を徹底的に解説したノンフィクションである『世紀の空売り』とは異なり、こちらの方は日本人の主人公を思う存分活躍させるという内容。
日本のバブル時代に19歳の学生だった荒木大河がニューヨークに渡り、ゴールドマンサックスで働いた後、30歳にして会社を設立。アメリカのエリートたちを引き抜いて活躍するという物語。金融危機やテロ問題を巧みにかわしていくのですが、経済小説としては底の浅さを感じます。どちらかというと、冒険小説の趣ですね。
ただし、この小説の影の主人公というか悪役として描かれたグリーンスパーンのことは、良く書けていたように思います。1987年から2006年までFRB議長を勤め、「バブルころがし」や「金融機関のモラルハザード」を生み出してしまったダブルスタンダードぶりは、誇張されてはいるのでしょうが、納得できましたので。
2016/9