ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンという2人の天才が共同で創業したグーグル社は、画期的な検索エンジンを擁して、瞬く間に世界的な巨大企業へと成長を遂げました。ほぼ全てのグーグル幹部に対する150回もの取材を通して描かれた本書は、創業期から2000年代にかけてのグーグル社の成長の秘密を解き明かしてくれています。
そもそも「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」を使命とするような会社が、巨大企業になりえたのでしょう。その秘密は、本書の第一章でいきなり記されます。それはグーグル社が、自社の収益源が広告業であることを自覚した瞬間から始まったのです。広告代理店や既存メディアが有していた「魔法」は、グーグルによって破壊されたというのです。
もちそん、それだけではありません。CEOとしてビジネス化を率いたエリック・シュミット、創業者たちのメンターとなったシリコンヴァレー長老のビル・キャンベル、「グーグル文化」を作り上げたシェリル・サンドバーグらの功績が、時系列で綴られていきます。その中で一貫しているのは、自社の行動原理が「善」であるという強い信念。だからこそ、プライバシーや著作権や国家規制をめぐる問題に対しても、強い姿勢を取り続けることができるのでしょう。
しかし本書は同時に、「グーグル帝国」が不滅ではないことも示しているようです。マイクロソフトやアップルも陥った創業期メンバーの退職に伴う動脈硬化や、既存業界の反撃や、新たなビジネスモデルの登場による停滞や衰退を、グーグルのみが避けて通れるものではないのでしょう。グローバルで膨大な情報整理の範疇を外れたネットコミュニティ分野での「フェイスブック」の登場などは、その一例とも思えます。
とはいえ、このようなビジネスはアメリカでしか生まれえないのかもしれません。異能ともいうべき天才性を有する創業者と、そこに群がる優秀な技術者と、それを支援するベンチャーキャピタルと、世界共通語である英語という風土が必要条件なのですから。
2016/9