りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

図書館内乱(有川浩)

イメージ 1

この本、シリーズの「2作め」なんだそうです。第1作である『図書館戦争』があることを、知らずに読んでしまいました。だから、なんて説明が少ないストイックな叙述なんだ・・と感心してしまったのです。でも説明過剰になるよりも、そのくらいでいいかもしれません。ちゃんと、理解できてますから。

表現の自由を巡る政治的対立が高じた結果、国家行政由来で設立された「メディア良化委員会」に対し、地方行政由来の「図書館」を防衛する「図書隊」が設立され、検閲と出版を巡って戦闘までも行われる時代。そう、近未来の図書館は、武装戦闘組織と一体になっているのです。まずは、平和的なイメージの「図書館」と戦闘を結びつけた発想に乾杯。^^

第1作では背景の説明や、両者の戦闘シーンなどもあったのでしょうが、本書での展開は「査問」や「情報戦」など冷戦化しています。図書館内にも「原則派」vs「行政派」の抗争があったりするから、結構複雑。

単純実直で本を愛して検閲を憎む新米女性隊員の「郁」を主人公にして、彼女とは因縁もあり本人たちだけ気付いていない相思相愛状態にある堂上隊長、図書館協会長の息子でエリートの手塚、情報に通じたクールビューティ柴崎らが絡んで、それぞれのエピソードが展開されます。

おもしろかったけど、気になる点がひとつ。ある種のコミックでよくあるように「ありえない」前提の話の中でキャラを掘り下げていくと、「強さ」や「完璧さ」のインフレ現象が起き安いんですね。だから、手塚や柴崎はもちろん、敵役である手塚の兄や、江東館長なんかも、信じられないくらいに「凄い人」になっちゃってます。その分「郁」の天然ぶりが際立つのですが・・。

このシリーズ、どこまで続けるのかわかりませいが、その点がだんだんキツくなるかもしれません。とりあえず、前に戻って『図書館戦争』は、読んでおきますけどね。

2007/1