りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。(辻村深月)

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母親からDVを受けた過去を持ち、地元を嫌っていたが故に上京して結婚し、フリーライターとなっているみずほは、母親を殺害した容疑を賭けられて失踪した、かつての親友チエミの足跡を追い求めます。それぞれに生活している旧友たちにインタビューを繰り返す中で見えてきたのは、「女子」として生きることの息苦しさでした。

そこには、さまざまな問題が重層的に絡み合っているようです。都会に出ていった者と、地方に留まった者との格差。キャリアを積み重ねている者と、一般職の事務員をしている者との格差。幸福な結婚をした者と、都合のいい女として消費されている者の格差。そして、それらの問題全てに深く絡みついている、母と娘の微妙な関係。

さまざまな面で「負け犬」と定義されるような人生をおくっていたチエミは、対照的なみずほをどう思っていたのか。仲が良すぎるほどの関係だった母親を、チエミは本当に刺殺したのか。2人の人生が再び交わろうとする時、みずほに真相を理解させたのは、「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」という4つの数字が意味するものだったのです。

文庫本の裏表紙の説明文に「全ての娘は救われる」とあったのは、内容的にはオーバーですが、感覚的には合っているかもしれません。著者は本書のことを「自分にとってのデトックスだ」とも述べています。また、富山県高岡市が本書の主要な舞台となったり、そこでチエミが出会う学生の口調がアニメキャラ的だったり、何より「8月7日」というのが野比のび太の誕生日だったりと、藤子不二雄先生への愛情を感じる作品にもなっています。

2016/5