りぼんの読書ノート

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夜来香海峡(船戸与一)

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主人公は、商社を辞めて国際友好促進協会というNPO団体を設立した蔵田雄介。東北の農村の嫁不足解消のため、中国人女性を花嫁として紹介するという「ビジネス」に、暴力団の介入という暗雲が垂れ込めてきたことを憂鬱に感じています。いくら綺麗ごとを言っても、所詮「人身売買」であることが、次第に重い意味を持ってくるのです。

そんな時に、旧満州地方から嫁いできた女・青鈴が、裏社会の金2億円を持って失踪。暴力団の男・柏木に脅迫された蔵田は、彼らと一緒に青鈴の足取りを追いかけます。どうやら青鈴が行動をともにしているのはロシア人らしいのですが、彼らの行く先々で、次々と殺人事件も発生。

「女性」という「商品」を狙って、日本の暴力団、中国の黒社会、ロシアのマフィアが蠢き始めているのです。しかし、彼らにも誤算がありました。「商品」であるなら高い値段を付けるところに流れていくのが当然なのですが、人間には感情というものもあるのです。

結局、最後まで残った謎に対する答えは、殺し屋となった男の純情と、青鈴という女性のしたたかさだったようです。2009年5月の刊行なので、既に半ばまで著されていた、著者畢生の大作となった満州国演義シリーズとの関連も感じさせてくれる作品になっています。

2016/5