りぼんの読書ノート

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いちばん長い夜に(乃南アサ)

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いつか陽のあたる場所ですれ違う背中をに続く、「芭子&綾香シリーズ」の完結編です。上戸彩飯島直子の共演でドラマ化されていますが、原作とTVではだいぶストーリーが異なっているようです。

著者はこのシリーズについて、自分を恥じて世間に怯えていた「前科持ち」の2人の女性が、次第に成長して新たに生きていく希望を持つ話であり、「あえて何も起こらない話」にしようと思っていたそうです。ところが、綾香の前住居とした仙台に取材に行った日が、2011年3月11日だったのです。

著者自身が現地で体験した震災津波禍が、物語を大きく変えることとなりました。彼女たちは2人とも、「大きな一歩」を踏み出すことになるのですが、それは結果論。もともとは、ホストに入れあげて昏睡強盗罪を犯した芭子以上に、息子を守るためにDV夫を殺害した綾香のほうが複雑な内面を抱えていたことを明らかにすることが、最終巻の目的だったのでしょう。

綾香が抱え続けた思いと、それを知った芭子の気持ちを、3.11以降の2人の変化と連動させたエンディングは、少々綺麗にまとめすぎたでしょうか。それでも、これ以外の結末はなかったように思えますし、やはり「感涙の大団円」で良かったと思うのです。

2016/4