りぼんの読書ノート

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シャッター通りに陽が昇る(広谷鏡子)

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丸亀市出身の小説家による、「故郷の商店街復活への思いを込めた」という作品です。父親の入院と彼との別れをきっかけにして、東京からドロップアウトして地元に戻ってきたアラフォー女性の奮闘記。舞台となっている「さぬき亀山市」は、もちろん丸亀市のことですね。

商店街の果物店の一人娘の英里子は、懐かしい商店街がすっかり「シャッター通り」となっていることに愕然とします。商店街の復興を決意するのですが、余所者扱いされ、女の子扱いされて、話は進みません。何より、シャッターを閉めたままの商店主が、それを問題に思っていないのです。

確かに、商店主の人たちは皆、もうリタイアしても良い年代なのですね。若者は既に町を出るか、企業に就職するか、店を継いだとしても郊外に出店したりしているのです。今さら店を開けても稼ぎにはならないし、そもそもこれ以上稼ぐ必要もないのでしょう。

だから「きっかけ」が必要なのかもしれません。怪しい芸術家、お洒落な電器屋頑固一徹のラーメン店主、クールな市職員女子、左遷された銀行マンなど、個性豊かなメンバーとともに活動を開始した英里子は、奇跡を起こすことができるのでしょうか。歴史ある城と、J2のサッカーチームと、ご当地グルメの骨付鶏で商店街の再興を目指すのですが・・。

もちろん今の「地方」で、大きな奇跡など起きようはずもありません。それでも、一回限りの人集めイベントで満足するのではなく、さまざまな試みを継続的に行おうという気持ちを商店主たちの間に起こせたら、それは立派な奇跡なのです。骨付鶏・・食べてみたくなりました。

2016/4


(追記)出張ついでに丸亀で途中下車し、丸亀城に立ち寄ってきました。丸亀城は素晴らしかったですし、骨付鶏はおいしかったのですが、商店街のアーケードはそのまま残っており、シャッターが閉まっている店も多かったようです。地方再生は難しいものです。